囂kamabisuan庵

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8月2日

元禄七、仲夏のころ、江戸を出で侍りしに、人々送りけるに申し侍りし

麦の穂を力につかむ別れかな 芭蕉
(むぎのほを ちからにつかむ わかれかな)

元禄七年五月十一日、江戸を発ち、最後の上方の旅へ。

見送りの人々への送別句。

芭蕉にとってこの別れは、ただの旅の別れではなく、彼の人生の時空の中での別れでもあるのだ。

さて、八月だ。

あと数日で立秋。

麦の穂の日焼け色濃く午後の2時 半可ξ
(むぎのほの ひやけいろこく ごごのにじ)

北海道産のパン用小麦粉でいまや大人気のハルユタカもやっと旅立つ頃合いだ。

ハルユタカは栽培が非常に難しく、生産量も減る一方。 人気はあるのに手に入らないことから、ついには幻の小麦とまで言われてしまうほどに。だと。

そこで 江別農協の農家さんたちが、春に種をまく「春まき小麦のハルユタカ」を、雪が積もる前に前倒しで種をまく「初冬まき」という離れ業を編み出し、風前の灯となっていたハルユタカを救った。んですぞ と。

「初冬まき」のメリットは各自の宿題に・・


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8月7日

あるじは、夜あそぶことを好みて、朝寝せらるる人なり。 宵寝はいやしく、朝起きはせはし。

おもしろき秋の朝寝や亭主ぶり 芭蕉
(おもしろき あきのあさねや ていしゅぶり)

元禄七年九月二十一日
車庸亭で七吟半歌仙興行。
この夜同亭に一宿。

連句会は深更に及んだため、芭蕉も亭主の車庸も大朝寝坊だわさ。

それでいいじゃんいいじゃんと、一句を亭主殿にプレゼントしたわけだわさ。

さてさて、立秋ときた。

どうりで朝晩が寒いくらいに涼しい。

おもしろき秋の朝寝や亭主ブルッ 半可ξ
(おもしろき あきのあさねや ていしゅぶるっ)

今年のコスモスは、例年より1・2週間早い。

ちいちゃい秋そんなに急いで何処へ行く?

この分だと冬も早いかな?


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8月8日

足洗うてつひ明けやすき丸寝かな 芭蕉
(あしあろうて ついあけやすき まるねかな)

貞亨五年四月下旬。「笈の小文」の終点須磨明石にて。と。

夏は陽が長いので、旅もつい、ハードスケジュールになる。

やれやれと宿についてバタンキュー。

あっという間に朝が来る。

たとえば、貞享五年四月二十日(西暦1688年5月19日)の、明け六から暮れ六まで歩き回ると、関西では、おおよそ午前4時15分から午後19時32分までの15時間17分のハードワークとなる。


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さらに当時は、15時間17分働いても12時間分の賃金っうことだから、暑い盛りに給料据え置きで拘束労働時間がドカンと増える江戸時代の労働者はたまらんですな。

聞くところによれば、2020東京オリンピックの運営のために、サマータイムを導入とかいっちょるが、気分は、江戸時代の不定時法適用とちっとも変わらんと余は思うわな。

おそらく、屋外競技は早朝と夕方にはじまり、10時くらいから14時くらいの間は休憩とかいってごまかす。

おまけに、TV放映権の都合で深夜早朝競技もバンバン。

つまり、サマータイムなんて、ボランティアやスタッフを24時間働かせるための呼び水っうパラドックスよ。

少なくとも深夜早朝の「早朝」を法律的に「並みの朝」とし、深夜はうやむやにぼかすというのが、サマータイム法の骨子だわさ。

まさに、サマータイム法は、2020オリンピック働かせ方改革法案となるわけだ。

江戸時代とは大きく違うのは、増えた拘束労働時間に対して当然ながらペイがあることだわさ。

経済効果7千億円とかいうが、増えた拘束労働時間に対するオーバーワーク諸々の経費がこの正体だっうことにすぎない。

経済効果なんて言うの卑怯だわさ。

恐ろしくて冷や汗が出る。

暑いと体が疲れると思いがちだが、実は、脳が疲れるんだとさ。

なおさら反対じゃわい。

足洗うて寝てまへ森の老ひたぬき 半可ξ (あしあろうて ねてまへ もりのおいたぬき)
寒い話だから季語は「たぬき」冬。

8月28日

しばし間も待つやほととぎす千年 芭蕉
(しばしまも まつやほととぎす せんねん)

寛文七年、24歳の若い作。と。

初夏の句だが、ホトトギスが次に鳴くのを待ってる時間は千年も万年も長く感じるぜよっう実に何ともない恋句だわさ。

長い悠久の千年という言葉を用い、妙な破調で句作したっうアクションが、自慢所っうわけですかね。

  しばし間も待つや千年ほととぎす

五七五調でもこれはひどいもんね。

さてさて、余はこのところ、人生初の油絵を描いてみんと、100均でキャンバスを調達したり、三脚利用のイーゼルを作ったり、絵の具を買い込んだりしていた。

パレットやナイフや油壺やその他諸々は、娘が昔使ってたお下がりを頂いて、準備は100%OK。

もともと絵手紙や絵日記程度の水彩はやる。
でも、油は初めて。

そんで、

しばし間も待つや黙らぬ油蝉 半可ξ
(しばしまも まつやだまらぬ あぶらぜみ)

実は、空の部分3日前に白を塗って乾き待ちをしていたのだがまだまだ乾かぬ。

ほほーそれで、
油は絵の具を置くように描くのだなということを実感したり。

今日は黄色と緑と青の下塗りを15分して終わり。
筆洗いとパレット拭き取りと手洗いで15分。

先が長い予感。

ちなみに正面の山は、札幌冬季オリンピックの滑降コースだった、恵庭岳だす。


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8月30日

元禄七年六月二十一日、大津木節庵にて

 秋近き心の寄るや四畳半 芭蕉
 (あきちかき こころのよるや よじょうはん)

元禄七年六月二十一日、芭蕉51歳。

愛人寿貞尼の死去の報が届いて十数日後、大津木節庵で句会での作。と。

さてさて、

本州は、暦の上では立秋から3週間も過ぎても、なお残暑がとくに厳しいときく。

おきのどくだ。

一方、当地は8月に入ってずっと冷涼な日が続いている。

ナナカマドもちらちら色気づいてきた。

サンマもたくさん獲れている。

まだちょいと早いが新蕎麦が待ち遠しい。

今日は朝から小雨がしとしと。

久しぶりに気持ちいい雨音を聴いている。

 秋めきて心の寄るや雨の音 半可ξ
(あきめきて こころのよるや あめのおと)


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